Northern Lithium社、Evove社、ならびに栗田工業の3社が、2027年からの英国におけるリチウムの商業生産に向けたパートナーシップに合意
- Northern Lithium社は、2035年までにイギリス北東部のリチウムを含む塩水から年間2万トンのリチウム生産を目指しています。
- このパートナーシップにより、Evove社の先進的な膜ベースのDLE技術と、クリタの実績のある水処理ソリューションの専門知識を活用し、長期的な生産目標の達成に向け重要な次のステップを確実に進めていきます。
- 詳細設計は現在進行中であり、2027年末までに最初の商業生産用ユニットが納品される見込みです。
Northern Lithium Ltd.(本社:英国ダラム州スタンホープ、マネージング・ディレクター:ニック・ポープル、以下「Northern Lithium社」)、Evove Ltd.(本社:英国チェシャー州ハルトン自治区ウィドネス、CEO:クリス・ワイヤーズ、以下「Evove社」)、ならびに栗田工業株式会社(本社:東京都中野区、社長:江尻 裕彦、以下「クリタ」)の3社は、高度なDLE技術を活用した英国初の商業規模のリチウム供給に向けたパートナーシップ(以下「本パートナーシップ」)に合意し、本年10月に3社による覚書を締結しました。Evove社のDLE技術を中心にクリタが設計・製造するモジュールをNorthern Lithium社の英国ダーラム郡の拠点に設置し、2027年に年間500トンの商業生産を開始、2035年までに年間2万トンまで引き上げることを目指していきます。
本パートナーシップは、最初の年間5千トン規模のLCE(Lithium Carbonate Equivalent;炭酸リチウム相当)の生産量確保に対するもので、Northern Lithium社のノーザン・ペナイン鉱床の広範な集水域において実施した、数百万リットルの塩水の汲み上げおよび貯留層の試験、ならびに、2025年1~4月にNorthern Lithium社のラドウェル・ファーム拠点における、1:15スケールのDLEプラントを用いた実証試験の成功にもとづいています。
リチウムは、電気自動車、固定型エネルギー貯蔵装置、および携帯機器に必要な充電池の製造における重要な原材料です。本パートナーシップは、リチウムの商業生産プラントが英国内および欧州地域の市場に安全で持続可能なリチウムを供給する最初の事例の一つであり、環境面と経済面で大きなメリットをもたらすとともに、変動の激しい世界的なサプライチェーンへの依存を軽減します。
LCEは、2030年までに英国のみで年間最大8万トン以上が必要と予測されており、2040年までには年間最大13万5千トンに達する見込みです。Northern Lithium社が鉱物権を所有する240平方キロメートルにおよぶ操業エリア全体で、最終的に5万トンのLCEを供給できる可能性があると考えられています。
このような背景のもと、イングランド北東部でリチウム抽出の商業的な実現可能性を確認したNorthern Lithium社は、同社のノーザン・ペナイン鉱床の塩水からリチウムを商業生産するための次のステップへ進んでいます。塩水からリチウムを抽出するより環境にやさしく効率的な方法として確立されている、世界的に有望な技術の一つとされるEvove社の膜ベースの高度なDLE技術を用い、クリタの水処理技術とプラント設計・製造に係る知見で、モジュール化かつ拡張性の高いDLEプラントが提供されます。これらのDLEプラントを現地の格納庫に設置して、塩水を汲み上げてリチウムを抽出し、抽出後の塩水を地下の帯水層に戻します。
Evove社のCEOであるクリス・ワイヤーズは、次のように述べています。「Northern Lithium社は、当初から我々のDLE技術を信頼しており、市場で一般的に見られるよりもはるかに早く商業生産へ進むことができています。当社のDLEテストセンターは彼らの拠点から車でわずか2時間の距離にあるため、彼らの塩水を広範に処理できることが進展を加速させ、英国、EU、北米を含む他のリチウム生産プロジェクトをいくつか飛び越えることになりました。」
クリタの水処理における卓越した専門知識は、このプロジェクトにさらなる深みを加えています。グローバルに事業を展開するクリタグループとして、世界中で半導体製造をはじめとする先進的な産業に向けた、水処理に関する75年以上の実績があります。
クリタの執行役員 イノベーション本部長の水野 誠は、次のように述べています。「我々は、Evove社の革新的なDLE技術を核としたリチウム抽出プラントの商用化に向け、国際的なパートナーシップを形成できたことを大変意義深く感じています。本プロジェクトでは、クリタが長年培ってきた高度な水処理技術と、Evove社とNorthern Lithium社の先進的な技術や知見が融合することで、効率性と環境負荷低減を両立させる新たなソリューションを創出します。3社の強みを結集し、持続可能な資源供給体制の構築を通じて、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。」
Northern Lithium社のCEO、ニック・ポープルは次のように締めくくりました。「2027年末までの初の商業生産開始に向け、私たちはEvove社とクリタが連携したDLEソリューションに大きな信頼を寄せています。先週、我々は東京で戦略的パートナーシップの覚書に署名し、今週には商業プラントの詳細設計に着手しています。クリタとEvove社は、私たちの塩水処理を比較的容易に実現できるだろうと考えており、2027年に最初の商業生産用ユニットが現場に設置されることを楽しみにしています。」

写真:今回合意をした3社代表者および関係者(2025年10月7日、栗田工業株式会社本社(東京都中野区)にて)
前列左から、クリス・ワイヤーズ(Evove Ltd. CEO)、ニック・ポープル(Northern Lithium Ltd. マネージング・ディレクター)、江尻 裕彦(栗田工業株式会社 社長)
後列左から、岩田 幸弘(栗田工業株式会社 イノベーション本部 新規事業開発部門長、アンドリュー・ウォーカー(Evove Ltd. チーフ・コマーシャル・オフィサー)、水野 誠(栗田工業株式会社 執行役員 イノベーション本部長)、小森 英之(栗田工業株式会社 イノベーション本部 新規事業開発部門循環資源創出プロジェクトリーダー)
Northern Lithium Ltd.について
2017年に設立された、イングランド北東部のダラム州に拠点を置く、革新的な重要鉱物開発を推進する民間会社です。持続可能な採取と生産技術を用いて、英国の大規模工場および電気自動車・蓄電業界向けに、北東部からのリチウムの安全な国内供給に注力しています。
Northern Lithium社は、チェーチ・コミッショナー・フォー・イングランドが所有する鉱物権を対象に、英国最大級の排他的な鉱区である、約240平方キロメートル(6万エーカー)におよぶノース・ペナイン鉱床において、約45年間の独占的な開発、評価、生産権を確保しています。
コーポレートサイト:www.northernlithium.co.uk(英語のみ)
Evove Ltd.について
2015年の設立以来、Evove社はリチウム、データセンター、食品・飲料生産における液体のろ過および分離のコストと環境負荷を削減するための先進技術を展開し、淡水化や工業用水処理にも取り組んでいます。
コーポレートサイト:https://www.evove.tech/(英語のみ)
栗田工業株式会社(クリタグループ)について
1949年に創立した栗田工業株式会社をはじめ、日本、アジア、英国を含むEMEA、北南米で計60社を超えるクリタグループとしてグローバルに事業を展開しており、また、日本、ドイツ、米国、シンガポールに研究開発拠点を設置しています。『“水”を究め、自然と人間が調和した豊かな環境を創造する』という企業理念のもと、高い技術力と蓄積した知見を活かした、水処理薬品・水処理装置・およびメンテナンス・サービスや、新たなビジネスモデルなどを開発し提供することによる、水や環境に関する課題解決を通じて、社会・産業のさらなる発展に貢献しています。
コーポレートサイト:https://www.kurita-water.com/
※本ニュースリリースは、3社によるニュースリリース(英語)の日本語抄訳版です。ニュースリリース原文(英語)はこちらを参照ください。
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